miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

大晦日に思う

以前、「七つの信州人」という本が出版された。信州人は地域ごとに異る気質を持ち、人括りにできない幅を持っている。土地が南北に長く、山、谷、峠、川などで仕切られるという物理的な環境の所産だろうか。 閑長は、信州文化に限らず、地方文化は多重構造を…

おジンの年末

毎年年末になると、初めての銘柄のジンを試すのがここ数年の恒例となっている。去年はプリマス、一昨年はヘンドリックス、その前の年はフィラーズだった。今年、何気なく選んだグリノールズ・ジンは待望の逸品だった。舌触りの相性が絶妙で、不覚にも飲み過…

戦う相手、多けれど

アリストテレスの「法律」だったと思うが、冒頭に「国際関係とは万国の万国に対する戦闘状態である」と書かれている。 旧日本軍の慰安婦問題は、5年前の日韓合意で「最終的かつ不可逆的」に解決された筈だった。五年後の今、韓国は「ゴールポストを動かし続…

ゴットファーザーのジレンマ

今夜から年末番組でゴットファーザーがパートⅢまで連夜放送される。閑長の好きな映画ベスト10へのランクインはもちろん、映画史に残る名画と思う。 生きようとすると殺すことになり、愛することが憎しみや悲しみに繋がる。藻搔くほど逃れられない。この映画…

文豪二人の審美眼

川端康成は国宝二点を所蔵する美術コレクターだった。その一つ「十便十宜図」は池大雅と与謝蕪村の奇跡の競作である。浦上玉堂の「凍雲篩雪図」はおそらく玉堂畢生の傑作だろう。康成の蒐集は作品に似ている。日本古来の文人精神に、嫋やかさが備わる。他の…

遊園地的鑑賞

「ハイデッガーはまだドイツ語にも翻訳されていない」ドイツ人の哲学教授が、来日時に漏らした言葉という。上田閑照は西田幾多郎の著作について「何ページにもわたって一行も理解できないことがある」と書いている。 わからないもの、理解できないことは少な…

京七石のさびと艶

近頃なぜか京都関連のTV番組が多く、異国文化に触れる気分で観ている。着物美人の数人が帯を誉め合う場面の一カットで、偶々蟇蛙のような庭石が映り「貴船石か」と眼を瞠った。 京都には加茂七石とか京七石とも呼ばれる庭石の名石がある。石好きの閑長はこの…

プレーンクリスマス

クリスマスソングの「ホワイトクリスマス」は、同名のハリウッド映画で歌われた曲だったが、ホワイトとはクリスマスの降雪だけでなく、赤くない、つまり流血のないクリスマスの願いの曲である。キリスト教徒でなくとも、一年に一度くらいは、戦争や紛争ばか…

アメグラの境遇

昨日、BSで「アメリカングラフィティ」を流していて、二年ぶり位に観た。話もセリフもしぐさも判っていたが楽しめた。アメリカの片田舎の高校生の、昼過ぎから翌朝までの出来事を描いていている。翌朝には旅立ちであり、別れの前夜の、成長物語「イニシエイ…

こととものととき 

学生時代、「もの」と「こと」の選択に迷ったことがある。つまり、これからの人生、熱を入れて取り組む対象を、「〇〇〇〇のもの」とすべきか、「〇〇〇〇のこと」と置くべきか、と・・。今思えば、うら若き、悩み多き青春時代だった。人生不可解となって、…

閑長の不易流行

出身高校が創立120年を迎えて、顕彰番組の放送が続いている。観ていて驚いたのは、校舎や学生の変貌ではなく伝統そのものの変化だった。こんな伝統なかった、あの伝統はどうした、見当たらない、の目白押しである。卒業して四十数年を閲し、静かな驚きだった…

肉筆と肉眼

テレビで見る映画は映画ではないといったのは池波正太郎である。池上は、映画館で観て感動した映画を、テレビで再度観るのは良しとした。そりゃそうだろう。でなければ当人だって不自由した筈ある。 その口真似をするなら、図録で観る絵は絵ではない、と閑長…

サイズと愛好、ふたつの傾向

ミニカーには、1/50、1/40、1/30など、さまざまな縮尺がある。1/30のモデルは、大き目なだけに凝った作りが多く、出来は良いが、人気がない。要するに、大きすぎて“おもちゃ”になってしまうのである。ミニチュアかおもちゃかという分類はマニアには大切であ…

「麦秋」に乾杯

小津安二郎といえば東京物語が挙がる。映画監督が選ぶ映画雑誌のランキングで第1位に選ばれた名画である。閑長が一押しするの「麦秋」である。日本映画の最高作の一つと思う。小味と反語を随所に効かせつつ、抑制を効かせつつ堅固なメッセージが語られる。 …

味噌は豆を煮て・・

今月6日の「われらそば蛮族」の投稿で、古代の蛮族が野牛の肉を、その胃袋に水と入れ当の牛の骨を焼いて煮るエピソードと、閑長のそば湯でそばを啜る習慣を似ている、と紹介したが、中国の故事を失念していた。三国志の姦雄曹操の二人の男児 曹丕と曹植にま…

レンブラントと数学の鼓動

数字に素数という数があって、現代社会ではクレジットカードの暗号化技術に使われるなど、無くてはならぬものとなっている。素数は、1 より大きい自然数で、約数が 1 と自分自身のみである数である。一桁の数字では、2、3、5、7。英語のprime numberの方…

黄金の鹿、まぼろしの鹿、しぐれの鹿

札幌の古書店から村野四郎詩集が届いた。旺文社文庫版の、かねて探し求めていた本である。目当ての「鹿」をめくると、加藤楸邨の文が添えられ、良寛が自作の歌を認めた書を、翁が寸でのところで手に入れ損ねた逸話が引かれていた。神無月の丘に濡れそぼつ男…

Force couple

閑長は柔道二級である。高校の授業で一年柔道を履修すると自動的に二級の免状がもらえた。腕前はもう一つで、意地の悪いクラスメートに、棒一本足して三級だと冷やかされた。その君は今、市の重職にある。 ペーパー二級ともう一つ、柔道の投げるという運動は…

キックの覚悟 

閑長の世代にとって昭和の中頃はキックの時代だった。仮面ライダーに沢村忠、ジーパン刑事松田優作が活躍した。近頃使われる「エッジ」ということばを聞くと、「キック」のエピソードを思い出す。 白洲次郎が戦前に留学していたオックスフォードの旧友ロビン…

マレーヴッチを回してみたら

カンディンスキーは、マネの逆さまに置かれた「積み藁」で啓示を受け、自身の抽象絵画の世界を開拓したという。その逸話に唆されたわけではないが、マレーヴッチの絵を回転させてみて驚いた。90度、180度、270度のそれぞれで作品のメッセージが変わるのであ…

イギリス美術の“英国性” 

どうしてこうも英国の絵画はイギリス的なのだろうか。雰囲気でわかる。英国のテイストが漂う。コンスタブル、ケインズバラ、ホガース、ウィリアム・ブレイク、ラファエル前派の諸氏・・。ケネスクラークはイギリス人の好みを「無意識の田園性」と表現してい…

失敗の埋蔵物

昨日だったか、テレビで林修が漱石を再読したと言っていた。クイズ仕立ての朝番組で、問題が漱石に関連していた。読んだのが、漱石にしては長めで、なにより巷間失敗作と言われる「虞美人草」だったので、意外に思った。「登場人物が棒をのっくんだように生…

モンティ・ホールの、ご尤もな落し穴   

モンティ・ホール問題は、モンティ・ホールが司会をするアメリカのショー番組で出されたクイズ。直感で正しいと思える解答と、論理的に正しい解答が異なる問題」の好例といわれる(Wikipedia)。実は、三択問題を、一枝と、二枝に分けて二択にし、どっちを選…

一行の必然性

バーで飲んでいた開高健と川端康成が、「芥川賞なんて一行にやっていい」と語り合ったという。開高健は間違いないが、川端はもしかすると記憶違いかも知れない。多分間違いない。重なりはしないが両作家、選考委員を歴任している。川端は下戸だが、酒席は断…

世俗の次にくるもの  

西太平洋ミクロネシアのヤップ島を、孤島の楽園、文明の手垢、眼あかとは無縁の場所と思っていた。ところが、VANの石津謙介が「リタイアしてヤップ島に住みたい・・」と言っている雑誌記事を見つけ、この聖地も俗化している印象を抱いた。石津は2005年に…

われら、そば蛮族

そばの最初の一たぐりを、汁につけずそのまま食する光景を目するが、そば湯でそばを啜ると、香りも味もそばに浸れる。汁の合間に、そば湯で啜る。これが閑長のそば食の流儀である。そばもそば湯も少なめがいい。 古代の遠征記を記した書で、今に忘れない印象…

閑長の雪の朝

朝起きて見たら、うっすら雪が積もっていて驚いた。予報も降雪だったのだろうか。薄い雪と小鳥の足跡で、中学生のとき、宿題で作った短歌を思い出した。 庭先に小さき足跡目につきて小鳥かと思う雪降りし朝 半世紀後の今、同じ光景で一首ものした。 初雪の小…

都電とネコとありの巣と - 昭和の池袋大勝軒

池袋大勝軒へは、いつも都電で行った。サンシャインの近くの駅で下車すると歩いて直ぐだったが、それから行列だった。 今から40年も前、大勝軒が高架下から少し入った大きな四つ角にあった時代である。待つ時間が長いから、文庫を読めた。携帯は未だなかった…

「惚れたが、悪いか」

掲題を作品最後のセリフに使った同じ作家が「生まれて、すみません」とも書いている。「惚れたが悪いか」は、太宰治『お伽草紙』所載「カチカチ山」のタヌキの最期のことばである。 昔話を翻案し、処女の冷酷さをもつ美少女をウサギに仕立て、愚鈍で哀れな中…

侘助のこころ

二十年ほど前、単身赴任先で、椿なら白の一重がすきだという人に会った。あとでわびすけ(侘助)という種類と知った。五月頃にいい香りで咲く白い筒形の花を忍冬(にんどう)と教えてくれたのもその人だった。 わが家のは、どこにもある芦原という赤の二重で…