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閑長のひとり言

閑長のひとり言

世俗の次にくるもの  

 西太平洋ミクロネシアのヤップ島を、孤島の楽園、文明の手垢、眼あかとは無縁の場所と思っていた。ところが、VANの石津謙介が「リタイアしてヤップ島に住みたい・・」と言っている雑誌記事を見つけ、この聖地も俗化している印象を抱いた。石津は2005年に物故しており、語ったのは前世紀のはずである。かの地の棒踊りも、観光客を当て込んだショーに思えて、見方が変わった。

 俗化を劣化、退行とみるのは一面的ではある。国文学者小西甚一は古代以降、「雅」と「俗」が交錯して文学が画され、変転を遂げてきたとしている。ドナルド・キーンは本書の解説で「健康で溌溂とした「俗」を本性とする古代文藝、端正・繊細な「雅」を重んずる中世、また古代とは別種の新奇な「俗」を本質とする近代」と「時代を区分したところに不滅の独創がある」と評価する。
 
 閑長はヤップ島の素朴に憧れ、ゴーギャのタヒチのように慕う一人である。かの地が俗化しているとしても、それが新たな「健康で溌溂とした」ものであることを願っている。

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