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閑長のひとり言

閑長のひとり言

都電とネコとありの巣と - 昭和の池袋大勝軒

 池袋大勝軒へは、いつも都電で行った。サンシャインの近くの駅で下車すると歩いて直ぐだったが、それから行列だった。
 今から40年も前、大勝軒が高架下から少し入った大きな四つ角にあった時代である。待つ時間が長いから、文庫を読めた。携帯は未だなかった。店の右隣が「ありの巣」という名の喫茶店だった(もしかすると“ハチの巣”だったかもしれない)。客が入るのも出るのも見たことがない。いつか行ってみようと思っていたが、ついに機会が来なかった。
 店の外に露店・臨時のテーブルと椅子があった。急いで食事をしなければならない作業員さんたちにつけ麺を出すむ臨時店舗だった。お客を捌くおばさんがいて、皆から「節っちゃん」と呼ばれていた。ずっと大将の奥さんと思っていたが、平成の終わりころ、テレビで、中野から手伝いに来ている妹さんと知った。
 やっと店に入ると、独立した一枚メニューで「特製盛りそば」と貼ってあった。「特製盛りそば!」と注文するのは初心者で、大概、「熱もり大」とか、「盛りチャーシューの大」とか言って注文した。麺に「熱」と「つめたいの」があって、それぞれ美味かったが、「熱」は最後に麺が白く延びてしまうとこ、「つめたいの」は熱い汁が冷めてしまうのが難だった。   
 「ネコ」は奥の壁にかかったポスターである。子猫が5、6匹も写った横長のポスターが貼ってあって、鯖ダシの効いた汁を啜る客を見つめていた。テーブルの隅で虫を見つけたことがあったが、小さな茶色いゴキブリだった。
 ある時行列で、バイト仲間にバッタリ会った。彼は「盛りメンマの大、熱にする」と言っていた。新潟出身の彼は、西武百貨店に就職内定していた。あの時以来、今日まで会うことはない。彼も同じ還暦である。住まいはどこか、達者でいるだろうか。 
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