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閑長のひとり言

閑長のひとり言

京七石のさびと艶

 近頃なぜか京都関連のTV番組が多く、異国文化に触れる気分で観ている。着物美人の数人が帯を誉め合う場面の一カットで、偶々蟇蛙のような庭石が映り「貴船石か」と眼を瞠った。
 京都には加茂七石とか京七石とも呼ばれる庭石の名石がある。石好きの閑長はこの七石を、二系統に分類できると思っている。錆と渋みの効いた鞍馬石、貴船石、糸掛け石、畚下し石と、派手な色彩で艶のある紅加茂石、雲ケ畑石、八瀬真黒石である。一斑全豹の誹りを承知で、これをさび系と艶系と勝手に名付け、京の作庭は、さび石と艶石が組み合わされて出来ていると思っている。
 
 九鬼周造は、「いきの構造」で地味・渋み、派手・甘味など対立、対偶の構造で「いき」を捉えている。立方体にまとめた概念図は岩波文庫の表紙にもなっている。けれどももっと大胆に「いき」とはさびと艶のバランスと見ることも可能ではないか。地味に埋没せず、派手に舞い上がらないバランスの境地である。「けり」をさびと観、「かな」を艶と鑑じる意心である。
 54歳で長逝した九鬼であるが、没前、京都山科に千坪もあろうかという邸宅を建て、芸妓だった二度目の奥さんと住まった。建物も今はないが、邸の庭石はどんなだったのか。興味は尽きない。

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  貴船

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