miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

失敗の埋蔵物

 昨日だったか、テレビで林修漱石を再読したと言っていた。クイズ仕立ての朝番組で、問題が漱石に関連していた。読んだのが、漱石にしては長めで、なにより巷間失敗作と言われる「虞美人草」だったので、意外に思った。「登場人物が棒をのっくんだように生硬・・」と誰かがどこかで評していた。林先生が敢えてそれを選んだのは、名作、代表作はさんざ読んだためか、不出来な作こそ読みたかったからだと思った。

 よく「全集を読め」という。小林秀雄トルストイを勧めた。杜翁は分量からしんどいが、全集を読めば日記 書簡から作家の素顔がわかる。なにより名作と失敗作の両方を読める。老練な作家ほど、本音は書かない。日記でも本心は明かさない。時に嘘だって書き残す。“あっ、しまった“と後で思うような足場や舞台裏は若書きや失敗作に埋蔵されている。「虞美人草」でも見つかる。

 作家の気持ちを代弁すれば、文字に書いた分、イメージが固まり、残したい圭角がとれ、鮮度が飛ぶのだろう。まさに不立文字か。

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