miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

読書

羽音

三岸節子の「美神の翼」を読んでよかった。情熱の美学書 最良の人生指南 懇切な画技書様々織り交ぜた人道書に出会った。 TVの美術番組を観ての読み始めだったが、大きな収穫だった。

ピカレスクバイブル

ボードレールの「火箭」「赤裸の心」をさる高名な詩人が “ ダンディのバイブル ”と評していて心外だった。ボードレール自身ははダンディだったが、 両書のスピリッツは・・、 むしろマーベリックと言うべきだろう。

横顔と後ろ姿

佐藤碧子の「瀧の音 懐旧の川端康成」が康成論として秀逸である。 実に客観的、第三者的に書かれている。つまり、間が良い。 なぜならプロットは佐藤自身のの自伝で、メインキャストは菊池寛であって康成ではないので・・。 そこに描き出されるノーベル賞作…

似た者同士

作家や画家の好みは、その嗜好と私生活がどの方向にどう破綻しているか、に多く左右される気がする。 金銭と女性に甘く、緩いと加点になる。 骨董、美術品を蒐集し、ために借金に追われるようなら大きな加点である。 ために短命や横死などと言ったら、花丸で…

一日にして

立花隆が、著作をする場合のインプットとアウトプットの比率を100対1と表現していた。 一冊の本を著すには、百冊の本を読み込む必要があるという意味で、ご丁寧に“最低”と付け加えていた。基本と方向性は同感だけれども、補足が必要と思う。 百冊は全く同じ…

中国を書く

小前亮の中国史関連の文芸書を読んだ。 穿った心理分析と該博な知識、そして機微を掴んだ文章にキレに三嘆した。 経歴をみれば、東大で中国史を専攻し、大学院まで修めていた。 マクロ的、概括的には宮崎市定。 ミクロ的、細密的には小前亮 この両輪で中国史…

減らない

断捨離で本の処分をしているが、一向に減らない。むしろ増えている。 ここは発想を変えて、下記の不等式をもって諒とせざるを得ないのかもしれない。 読まずに積んでいる本

二つの肖像

甘粕正彦の評伝二作を続けて読んだ。 似て非なる人物が二人現れた。 両作を合体、混合させようとしても。中々混ざり合わない。 山なら山、薔薇なら薔薇といった、同じモチーフを描いた別の二つの絵に思えた。 伝記の宿命かもしれないが、客観を探索し選別す…

比べて見れば・・

スティーブン・ファージング「世界アート鑑賞図鑑」(東京書籍)は、当今評判のゴンブリッジ「美術の物語」以上の名著と思う。 コメントと記載方法、採り上げる作品、全て踏み込みがあって傑出している。 といより、「ゴンブ物語」はそもそも大した本ではない…

乱歩と潤一郎の他にも・・

小松左京と立花隆はよく似ている。基本的に理系の頭である。著作のアチコチに先進的な科学的知見が盛り込まれている。 本棚整理をしていて偶々上下巻の「日本沈没」を目にし、そのまま読み始めて気が付いた。本を手に入れた中高生の頃は、立花隆は未だデビゥ…

隣り合う詩

難解な詩でも、その解読を詩そのものが教えてくれる。それも別の詩人の別の詩が、である。 平凡社に「世界名詩集大成」という全十八巻の本がある。かの立花隆が「すごい本」と形容する、今後二度と現れない偉業というべき全集である。 その本を読んでいると…

前評判ほどは、

原田マハが持ち上げたゴンブリッチ「美術の物語」、読み終えたのだがさほどのことは無いと思う。むしろ同先生の「美術の歴史」の方がわずかながら秀でているように思われる。 ただ、強いて言えば画家の対比的な記述・評価などは、ほどほどに楽しめる。 ジョ…

両替お願いします

「コインに両替できない紙幣はニセ札だ」と喝破したのは、現象学の始祖エドムント・フッサールと記憶する。 意味するところは、どんなに難しく高尚な理論でも、かみ砕いて説明できないモノは皆まやかしだ、という意味という。 当妙の比喩に脱帽である。但し…

買って読むか、売って読むか

買ったきりで読まずに、倉庫まで借りて積んだままにしている。 およそ30年間。そんな蔵書なのだが、売り先が決まると、本への愛惜とお金の惜しさで、 半日で5~6冊を読了する。近頃は、“ FIFO、 First-in First-out ”「先入れ先出し」ならぬ、 「先売り後読…

インとアウト、その傾向

若い頃は、イン・プット重視だったけれど、 やがて、アウト・プット主体となり、 さらに還暦も過ぎるとそれも飛ばして、叩き売りに移行せざるを得ない。 それは「セル・アウト」とでも呼んだらいいのだろうか。

書籍その場限り・・

本は買ったときに読まないとダメである。 たとえ数ページ、数行でも読めば少しでも元が取れるし、 再読の意欲が植え付けられる。 詰んどくと読む気が失せる。 書宝となり書封に至る。

悪魔の循環

断捨離で本を売ろうと選別すると、読み始めてしまうだけならまだしも可愛い。興味のタネが巻き散って拡大し、新しいジャンルに関心が湧いて、図書館で本を借り、さらに欲しくなった本を手に入れてしまう。蔵書は減るのではな く、増え続け、挙句の果てには作…

古き良き小さな活字

「字が小さくて読みずらい」とは、本の低評価の決まり文句である。 しかし大きければ良いというのは、世の賢しらで、 ”見やすい見にくい”の他に、”五感に訴える” という働きが大切である。 活字で、整列の号令が感じられ、やや年代焼けした紙の文字が、 小さ…

書棚の誉れ

「美術の物語」にはコンパクト版もあった。こちらはファイドン版だけである。 名前の通り携帯性には勝れるが、図版の発色はやはり大判には及ばない。 好みとなろうが、河出書房新社版よりは若干勝るように思う。 結局、大版もコンパクト版もファイドン社版で…

元、優勢

ゴンブリッチの「美術の物語」は原田マハのコメントで“日本的”に火が付いた。 ヤフー知恵袋で聞いてみても反応がないので、お金とエネルギーを費やして自力で調べた。 元版ファイドン社版と河出書房新社版の優劣について、である。 ファイドンの方が良い。 …

Ecco Homo!

「サンダカン八番娼館」の作者 山﨑朋子の自伝「サンダカンまで」を読んで、一驚を喫した。 若々しい肉声が語り掛けてきた。 屈しない心が立ち昇った。 自伝から入るイレギュラーを顧みず、本歌「サンダカン八番娼館」を手に取った。結局、作者の山﨑朋子自…

拘りに憑りつかれ・・

石垣りん全詩集 茨木のり子全詩集 吉原幸子全詩集 ゲーテ「ファウスト」全邦訳 E.ブロンテ「嵐が丘」全邦訳 メルビィル「白鯨」全邦訳 ミッチェル「風と共に去りぬ」全邦訳 基本、全て初版である。 岩波数学辞典5冊以上 岩波国語辞典10冊以上 広辞苑10冊以上…

紀要文学

美術館の紀要を読んでいて、 麗々しい”当たり前”の掘り下げ、 限定句過多の言い回し、 妙なへりくだり、等々に食傷した。 編年の数字を扱うのに、表もグラフも使わないのに呆れてしまった。結局、斯界はこのヒエラルキーと湯加減、 つまり遠慮と忖度、摩擦の…

誇り

カジキマグロ漁を戦場とした小説は「老人と海」の他にもあった。 フレデリック・フォーサイス「帝王」は読むに足る一冊である。あらすじの紹介はネットに譲りたい。 「老人と海」よりも通俗である分、パンチの効きはよい。即効性がある。 ただ、タイトル「帝…

思いがけなく出会った、出会うべきもの

「絵画の発明」という本を手に入れた。サッティスというイタリアの美術史家の作である。 副題は「ジョルジョーネ”嵐”解読」とある。パラパラとしただけで未読である。 絵画が、絵画表現でしか表せなかった意図と主題を、ジョルジョーネの謎多き名作で論攷し…

勝者の得るモノ、与えられる物

ヘミングウェイの「勝者にはなにもやるな」の勝手解釈である。 ・与えては不純になる ・全て得ている ・すでに得る、失う・・を超越している ・” やる ” 分だけ失ってしまう どれも違う感じがする。

マダムとの相性

「マダム・ボヴァリー」は、ほとんどの仏文関係者が賛美するフローベールの名作であろう。サマセット・モームの推す『世界の十大小説』の一冊でもある。 ミーハーの閑長はもちろん飛びついて読んでみた。入手困難な中村光夫訳の文庫本まで手に入れて読んだ。…

ピカレスクなかりせば・・

関羽よりも張飛好き、 趙雲よりも夏侯惇好み、 孔明よりも周瑜贔屓、 馬謖よりも龐統ファン。 コアな三国志ファンならば、大方、肯首頂けると思う。 さもなくば、激烈な三国志論議が始まるか、どちらかと思う。

非共感のメッセージ

近頃亡くなった立花隆が、本の推薦を頼まれて断ったいきさつが、同氏の蔵書と読書量を称える本に載っている。 氏の言いたいこと、それは愛読書や共感書は、人みな違う・・という事と思う。だとすれば、全く同感である。 閑長は赤川次郎と内田康夫と藤沢周平…

「バベルの図書館」の「バベルの著作」

阿部公房が自著の「砂の女」のインタビューに対し「大意なんて書けるくらいならこの本は書かない」と応えていた。NHKの「100分で名著」という番組だった。 以前にも似たようなことを見聞した記憶がある。 「プラトン」の著者 田中美智太郎は、要約できないか…