miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

未完の未遂

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 川端康成の「美しさと哀しみと」は中学か高校の時に読んだ。川端作品の中では一番惹かれた。同性愛の女が、弟子入りしている女流画家のために、かつて師の愛した男の家庭破壊を企てるという筋立てが、ドラマチックだった。文庫本でも手に入れて、転居の先々でも再読した。近頃、偶々ウキペディアをみたら、「中間小説的な粉飾のストーリー展開で、川端の野心的な代表作とは見なされてはいない・・」とあった。
 川端のノーベル賞受賞理由となった作品が「雪国」「千羽鶴」「山の音」「眠れる美女」「古都」などとすれば、「美しさと哀しみと」が “ 中間 ” と貶められる理由は、筋、つまり明確なストーリーのためか、と思える。完成された料理よりも、盛り付けも味付けもほどほど、ソコソコの料理の評価が高いのは、合点がいかない事ではない。素朴の妙味、未完の魅力といえる。
 よく会心作でなく、失敗作にこそむしろ作家の本音が現れる、と言われる。直ぐに思い付くのは漱石の「虞美人草」である。この伝でいって中間小説「美しさと哀しみと」は、未完が未遂となった固茹で、ハードボイルド小説とでも言えようか。作家の嗜好が濃厚過ぎるほどに、煮詰まっている。