miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

たんほぽの産毛

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 川端文学のエロティシズムの極致は「眠れる美女」でも「千羽鶴」でもなく、絶筆の「たんぽぽ」と思っている。「踊り子」といえば度肝モノかもしれぬが、閑長は「たんぽぽ」のこころ根のエロスに、並ぶ作はないと感じている。
 「たんぽぽ」の後段に、代名詞的に“稲子の母”としてだけ登場する四十を越した女性が、寝支度で帯を解く時、“裾徐け”を脱いだものかどうか一瞬迷う場面がある。隣室に休む稲子の婚約者を意識するのである。「この年をして」と自分の気持ちを心が察して声にはならぬつぶやきで思うのである。これは自嘲ではない。“裾徐け”という語は作中になく、「長襦袢の中に巻いた布」と表記される。

 この作が絶筆なのだから、川端の描く性の深遠を思わずにはいられない。