miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

閑長の右ひだり

 ムンク「叫び」は、同名、同構図の作品五点が存在している。油彩にパステル、リトグラフテンペラという画法の違いのほか、背景や、遠景の船の数などの違いがあるのだが、例外なく道はどれも左上に向かっている。以前、テレビ番組で、右上に向かっているように画像を反転させた画像が放送されて、全く違う印象を受けた。ムンクの本歌どおり、道は左上りでないと絵のメッセージが弱い。
 岩波新書の「絵画の見かた」という対談形式の本で、美学者 矢崎美盛は、絵画では、絵の重点は右にあって、左が始まりで右は終点になる、と語っている。対談相手は洋画家の中村研一であった。
 閑長の見立てでは、左上りは叫ぶ人が放置され、右上がりは二人連れから逃避する構図となる。遣りようのない寂寞感を伝えるのは放置の方である。右と左の対であってもそれ程、ニュアンスが異なる。

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