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閑長のひとり言

閑長のひとり言

鉄人の書

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「良い絵には中心があって、右回りまたは左回りに画面が構成され、最後に締めくくりがある」 
『「古書画」目利きの極意 - 鑑定の鉄人part4』で、著者の渡邉包夫が示す、“ 優れた絵 ”の特徴である。日本画について語ったものだが、西洋画にも中国画にも当てはまるという。渡邉包夫は既に物故したが、人気テレビ番組「なんでも鑑定団」の長老と呼ばれた、横山大観の弟子にして日本画壇の大御所である。
 一読して心に刻まれた言葉であったが、その後、ゴーギャン「説教のあとの幻影」をみて、意味するところを実感した。コーギャンのこの名作は、私にとって、かねて謎を含んで気になる絵だった。意外なモチーフと不可思議なしぐさに奇想な構図が相俟って、消化の悪い、気掛かりな絵として印象に残っていた。あるとき画集で再会し、渡邉包夫の言が当てはまって驚くと共に、胸のつかえが落ちる思いがした。旋回と締めとが画面を占めているのである。
 渡邉ドクトリンは、今や私が絵を見る際の無言の助言となっている。同書で一押しされている 今泉雄作『日本絵画の見かた』も座右の書となっている。ただこの『見かた』、「円山応挙は裸身を描くので品がない」としていて、困ってしまう。