「ブロンズや石膏という扱いにくい素材を使って不自由をあえて課し、本質的なものだけを表現する」
お能の女形と装束、動作を譬えに引いた造形作家丸山雅秋の言葉が印象的だった。徒然草の「よき細工は、少しにぶき刀をつかふといふ 妙観が刀はいたくたたず」の段を自然と連想した。
もし俳句や短歌に文字制限がなかったら短詩に飲み込まれ、詩の一ジャンルとして実を結ぶことはなかっただろう。造形物ばかりでになく韻文も、言葉の制約を代償に表現の幅を拡げている。
制約は可能性も胚胎する。
丸山雅秋「存在-関係」 於ギャラリー82