miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

同時にみえない

 眼に触れない背面までも入念に制作する彫刻家がいて、ひとに「誰も見ないのでは」と指摘されると、「神が見ている」と応えたという。そんなエピソードをどこかで読んだ。ルネサンスの彫刻家だったと記憶する。神様ならば、眼に触れない背後も見れるだろうし、前と後ろ、全アングルを同時にまなこに収めることもできよう。
 平面の絵画作品と違って、ブロンズには一目では眼に入らないアングルが必ず存在する。見えない視覚の存在と意味が、作品のニュアンスと滋味をいや増してくれる。物理的にも意味的にも見通せないところが、立体作品の尽きない魅力である。

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 丸山雅秋「存在-関係」