ぽかん力と突然力
スルバインの「壺のある静物」は好きな絵だが、観るたびに白か透明の普通のコップが一つ欲しいと思う。凝っていない何でもない器物であれば、コップでなくても良い。息がつける。金魚鉢に浮かべる陶器の玉も、伊万里風の柄ものの中に無地の球が一つあるとホッとする。閑長はこれを“ぽかん力”と呼んでいる。
文学小説が細部まで緻密に構成されていると堅苦しくて面白みに欠ける。というより名作は、必然の中に突然性を無造作に書き込んでいる。小説が脈打つ。「風と共に去りぬ」のレッドバトラーの軍隊志願、「雪国」の駒子の立ち居振る舞い、「ファウスト」の自殺取り止めなど等、例はたくさんある。閑長はこれを“突然力”と呼んでいる。
他にも贔屓の〇〇力があるが、今、ちょっと思い出せない。