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閑長のひとり言

閑長のひとり言

インデックスとコンテンツ

 少し前、読売新聞主筆渡邉恒雄による昭和の回顧番組が放送されて楽しめた。中で渡邉は、若いころ読んだカントの有名な言葉を諳んじていた。番組とは直接関係のないシーンなのだが、驚いたのは、その言葉が書かれている箇所を、実に正確に上げてみせたことである。

「わたしたちが頻繁に、そして長く熟考すればするほどに、 ますます新たな賛嘆と畏敬の念が心を満たす二つのものがある。それはわが頭上の星辰をちりばめた天空と、わが内なる道徳法則である。」

 この一文、実践理性批判の結語の冒頭に書かれている。実践理性批判とわかっている人、結語と覚えている人、そこまでは少なくなかろうが、結語の冒頭と即座に言ってのけたのは、よほど読み込んだ結果といえる。
 書きたいのはインデックスとコンテンツの関係である。閑長は加齢により記憶力が大きく減退しているが、忘却しているのとは違う。思い出すきっかけ、見出しが見当たらないのである。はてなブログも難儀しながら思い出して書いている。反対にAI化の進むデジタル社会では、インデックスに満ち満ちた環境にコンテンツは伴走しているのだろうか。

 池澤夏樹は世界文学を読み解いた著作で、メルヴィル「白鯨」の主要なメッセージを「世界にはインデックスはない」こととしている。だからあんな巨大で、得体の知れぬ、不死身の怪物を必要としたのだ。メルヴィルがもしも、現代の怪物小説を書いたとしたら、どんな怪物が登場させるのだろうか。