理論と実験、理論と現実
日本人のノーベル賞受賞で、一番多いのが物理学賞の9人。そこにアメリカ国籍の南部陽一郎、中村修二、そして今回受賞の真鍋淑郎先生を加えれば総勢12人になる。日本は物理大国と言っていい。
物理には、理論物理と実験物理の二ジャンルがあって、車の両輪という。日本人は、初代ノーベル賞の湯川秀樹をはじめ理論物理学での受賞が多く、実験物理での受賞は江崎玲於奈のほか、小柴昌俊、梶田隆章などの各氏である。今回の真鍋先生は理論物理といっていいと思う。
ノーベル賞は基本的に実証された研究に限られ、検証されない理論オンリーでの受賞は難しい。かのアインシュタインのノーベル賞受賞理由も、未解明の相対性理論ではなく、実証済みの光電効果の解明だった。
さて、真鍋先生は受賞後「未来の気候を知りたい」と語っている。どこまでも好奇心旺盛である。けれども実験物理の視点からいうと、未来の気候はかならず実証される。というか、現実として突きつけらる。その時、真鍋先生はどのような感慨を語られるのか。それは興味でも、好奇心の問題ではない。