るす模様としての道
少し前に、キリストの後ろ姿を描いた絵を観てみたいが、そんな絵を観たことがないと投稿した。今も変わりがないのだが、最近、美術書を眺めていて、「こんにちは、クールベさん」がそれに近いように感じた。ギュスターヴ・クールベの代表作にして意欲作である。
その絵、厳密に後ろ姿を描いていないが、左後方からの視座と対する二人の人物のアングルによって、おおよそ背後からの作品と見做しうる。そこに描かれたクールベの自我と主張は、超越的な存在をイメージさせる。
そこから連想が広がった。「こんにちは、クールベさん」は路上での出会いを描いているが、「道」の絵の多くが、キリストの後ろ姿の留守模様のように思えてきた。岸田劉生、長谷川利行、東山魁夷、ホッベマ、フリードリヒ、まだまだ沢山あるように思う。
いま、窓の外は春の雪である。閑に任せた夢想は、雪のように舞って、サッと消えてゆく。