対角線の隠し味
「私は対角線が嫌いだが、ホッパーの対角線だけは別だ。ホッパーの対角線は、私が愛する唯一の対角線である」
マーク・ロスコがエドワード・ホッパーの絵を評していった言葉である。改めてホッパーの絵をみると、窓から差し込む日光は対角線の様である。水平に引かれた線も少し傾いていて、対角線の要素がある。何より描くアングルが対角線的である。
対角線というと詩人の吉原幸子を思い出す。今、堆積した本の中から詩集を発掘できなくて、正確な詩句を書き止められないのだが、その作品に対角線をことばを求める手掛かりとして謳った見事な一篇が、確かにあった。
唐突な締めくくりであるが、対角線は顕在、伏在の両方で、芸術的な喚起を引き起こす力を持っているように思う。