miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

往く人は、

 長谷川利行明治24年に生まれて、昭和15年に49歳で死んだ。大正の15年間は通して生きたわけだが、「廃道」はその末年に描かれた。利行35歳の作である。
 この絵は、第回帝国美術院展に出品された記録があるが、その後失われた。今は「夜の道」と題する歌仙紙の詩画集所載のモノクロ写真が残るばかりである。寸法の記録もない。
 
 廃道、旧道、裏道、外れ道、抜け裏、横道、間道 
  
 どの言葉も詩美を纏っている。消失したと思うと哀惜の念は、いやが上にも高まる。

    廃道の 傍らに花 風揺する
 
    忘られし この途をゆく 日暮れかな

 季語を入れる余地はなかった。

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