珈琲の味なあじ
バルザックは「コーヒーを飲むと精神に号令がかかる」と、一日50~60杯のコーヒーを飲んで執筆した。
だから人間喜劇の主人公は皆、“感情の自動激化”ともいうべきキャラクターで登場する。
オイラーに次ぐ論文執筆数を誇るポール・エルデシュは、数学者を「コーヒーを飲んで定理を発見する者」と呼んだ。
自らの頭脳はいつもフル回転だった。会う人々に「君の頭は営業中かね?」と問うた。
「その日その日の狂熱を持て」と書き残したのはボードレールだったが、コーヒーで高揚し、頭が高速回転するのであれば、毎日を熱狂的に生きることも容易いだろう。
昔 、ある人を評して“一杯のコーヒーに幸福を感じられる人だった”という一文をどこかで読んだ。小説の題も筋も忘れてしまったが、この賛辞だけはいまだに記憶している。
コーヒーの効用は強く、そして広い。