miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

迫真と現実のはざまで

 黒澤明椿三十郎」のラストの決闘シーン、初めて目にしたとき劇的なコマ運びに眼を瞠った。
 三船敏郎椿三十郎と仲代達也の室戸半兵衛が数十センチばかり離れて立ち、双方、ギラリと刀を抜いて切り掛かってと思うや鮮血が吹き上がって、一瞬で勝負は決した。
 今、加齢に伴い意固地になって再度鑑賞すると、仲代半兵衛の抜刀は上方に抜いて切り下すという二挙動、エンジンでいうと4ストローク。対して三船三十郎は、抜いたまま一撃で切りつけるという、エンジンでいうところの2ストローク、抜くと切るが一動作の方が早いに決まっている。それに気づかぬ仲代半兵衛は士道不心得といえまいか・・

 黒澤明に関係者だけに配った映画製作の心得本があって、中に「役者に演技をさせてはならぬ」という一文があるという。演技然とした芝居の戒めだろう。ところで仲代半兵衛、相手の右手を抑えて頭突きをくらわすか、抱き着いて鼻に噛みつくか方がましだと思うのだが、それではリアルに徹するつもりが、演技然に堕してしまうか・・

 この投稿、BSテレビの「黒澤明映画はこう作られた」を観て思い立ち、再放送で細部を確認しようと思ったが、放送延期になったので記憶で書いた。

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