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閑長のひとり言

閑長のひとり言

抽象の母なる“制約”

 正月特番で縄文、弥生のこころを採り上げた番組が流され、王塚古墳の壁画が日本独自の意匠として焦点が当てられていた。らせん模様や三角形を組み合わせた文様で、動物や人物を描いた中国や朝鮮半島の壁画とは全く異なる独自の意匠という。ゲストの女性心理学者は、“数学的で法則性がある文様”と評していたが、閑長は一見して海洋からのインスプレーションを感じた。らせんはうず潮で、三角形の組み合わせは波頭と、水面に反射する太陽光である。王塚古墳が福岡の海浜に遠くない場所であったので、得心すると共に意を強くもした。番組名は「古代人のこころ」だった。

 ペルシャ絨毯の幾何学文様は、荒涼とした乾燥気候の所産という。環境が制約されると抽象デザインを胚胎するらしい。
 見渡す限りの海原と大空は、シンプルで単調な制限的な視界である。海洋は、漁獲は豊穣の源でも、陸と比べて制約の世界といえる。制約が人間のイメージを膨らませ、幾何学的に文様の母体となる。死後の世界への入り口である古墳が、生物としての生まれ故郷を希求する意匠で飾られていても、不思議でも突飛でもないだろう。

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