閑長の十六夜帳
一つ家に遊女もねたり萩と月
俳聖芭蕉の有名句。おくのほそ道」所載。新潟から富山へ抜ける関に一泊したときに詠んだ句とされる。
みすぼらしい自分とはなやかな遊女が、偶然、同宿となった。耳を済ますと話声がする。宿に咲く萩を月が照らしている。
遊女が月で自分が萩のような一夜だ。
この話芭蕉は、同行の曾良が書き留めて伝わったとしているが、曽良の日記になく、芭蕉の創作らしい。味なフィクションである。
時代替わって令和のわが家。
上の娘の縁談がまとまり、姓が変わる日も近づいた。
自分のムスメでいてくれる日数も数えられる程になった。今夜は一家全員で夕飯を食べ、昔のようにそろって茅屋で眠った。
その日、前夜が満月だった。布団の中で一句浮かんだ。
一つ家に娘ら寝たり十六夜
こちらは実話である。