あんなに耳にした蝉の声が、近頃トンと聞かなった。
蝉鳴くや つくづく赤い風車
ふるさと信濃の俳人小林一茶の句。“つくづく”が効いている。
めっきり秋めき、近頃は吹く風にヘアラインが感じられる。
白山の石より白し秋の風
芭蕉の秋を捉える感性には心底、共感する。
最後は、物質と色のイメージをものした飯田蛇笏の句。
鉄(くろがね)の秋の風鈴なりにけり
鉄の無機質な肌合いが寂寞感を伝える。
どの句も視覚では捉えられない風を、色に仮託して詠った句。風を介して色で語って、季節とその風趣を伝えている。
長雨後の鳥海石。