風に語る
蝉鳴くや つくづく赤い風車
ふるさと信濃の俳人 小林一茶の句。“つくづく”が効いている。
赤は信濃的な色である。赤は土の色であり、むき出しの土地の色だから。山に囲まれ、川に恵まれた長野県は、崖や河岸が随所にみられる。そこはむき出しの土地に出会う場所である。
白山の石より白し秋の風
芭蕉の秋を捉える感性に共感する。
秋めいてきて、風にヘアラインを感じるようになった。
もうひとつ、物質と色のイメージをものした飯田蛇笏の句。
鉄(くろがね)の秋の風鈴なりにけり
鉄の無機質な肌合いが寂寞感を醸し出す。
どの句も視覚では捉えられない風を、色に託して詠っている。風に感じ、色で語って季節とその風趣を伝えている。
絵はゴッホ、本稿は再掲です。