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閑長のひとり言

閑長のひとり言

隻手のかしわ手

 やはり水滸伝英雄ランキングの筆頭は、登場順ではなく、異様性と仕舞際だった。閑長は行者武松を推したい。素手で猛虎を撲殺したからではなく、方臘討伐でその腕を片方失い、戦友林冲を片腕で介護しつつ、寺男として長寿を全うした生き様に、水滸伝には稀な余韻と余白を感じる。比肩しうる英雄といえば、わずかに、無冠の一漁師として天寿を全うした阮小七一人だろう。
 隻腕の大寺男武松が、ある秋の日、寺の階に腰かけて眺める夕暮れの光景を想像する。武松の背負う星は天傷星である。

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 なお、阮小七の背負う星は天敗星である。