自覚の哲学、数学の自覚
京都大学の望月新一教授は、難攻不落の「ABC予想」を自身が開発した「宇宙際タイヒミュラー理論」によって証明した。「宇宙際タイヒミュラー理論」のエッセンスは「同じものでもあり異なるものでもある」という。
けれども数学者の間では、「宇宙際タイヒミュラー理論」はもちろん、「ABC予想」が証明されたこと自体が、今なお議論されているという。
それを聞いて望月論文はもしかして詩の言葉で書かれているのではないかと思った。
同時に、「同じものでもあり異なるものでもある」とは、ハイデガー『存在と時間』の”存在”「SEIN」と”世界内存在”「IN DER WELT SEIN」に似ていると思った。ハイデガーは、漫然と存在する「SEIN」的人間と外界との関係を意識的に活き切る「IN DER WELT SEIN」的人間に分けるのであるが、もとはと言えば同じ人間なのである。
数学も哲学もそして芸術も、壁を破って、新領域、新境地を開拓すれば、視界は一気に拡がる。