かそけき世界
“スカラベ”とは「ファーブル昆虫記」に出て来る糞虫である。このスカラベ、糞採集に出かけている間に、肝心のわが家とため込んだ食料の糞を、別のスカラベに乗っ取られてしまう。けれども挫けず、メゲズに又、糞採集に出かけるスカラベにファーブルは、厚意と羨望を寄せている。昆虫記が好まれ読み継がれるのに、この小さな、あまり清潔とは言えない虫が一役買っている。
「ませに咲く 花に睦れて 飛ぶ蝶の うらやましきも はかなかりけり」
西行「山家集」所載の一首である。籬垣(ませがき)に咲く花の周りにまつわって飛ぶ蝶の、軽さと儚さをうらやましく感じる西行の心を詠っている。はかなきものへの西行の思いが心に沁みる。
ファーブルも西行も、儚いもの、ひた向きなものがこの世を“ 憂き ”とせずに生きる姿を作品としている。
ネット収集画像 「籬垣」