2022-02-28 研究の為、訳業のタメ、吸収の溜め 文学 「雨夜の品定め」を読みたくて『源氏物語』を再読した。若い頃はくどくどしいと思った記述にも人間の感情の機微と世間の仕来り、習わしが描き込まれてい、読み耽った。 『源氏』を書いたのが紫式部三十代の頃とすると、実経験だけでなく、想像の所産も多いはずである。作家なら当然なのかもしれないが、紫式部の人間洞察の深さ、想像力の広さに、三嘆する思いだった。 『源氏』の翻訳者は十指に余るが、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴など、研究者より作家の訳が多いのは、『源氏』が名作であるからのみならず、小説を書くヒントが散りばめられているためと思われる。 『源氏』は汲めども尽くせぬロマンの源泉である。