ワンさかは美しい

　今年一年、100本以上の映画を観たが、映画館で観たのは「孤狼の血Part2」と「007の最新作」の2本だった。殆どの映画はテレビかビデオで観たのである。
　映画館以外での映画鑑賞を認めなかったのは池波正太郎である。例外として劇場で一度観た作品を、テレビやビデオで再鑑賞するのは「是」としている。そうとでもしなければ、池波ご自身が困っての事だろう。けれどもその嗜好には共感する。貫徹はできないが。
　
　近頃、ウィリアム・ブレイクの詩を読んでいて翻訳がどうにもしっくり来ず、これは原文のまましかなかろうと思うことがしばしばあった。例えば、有名な「Exuberlance is beauty.」が「横溢こそ美である」「夥多は美である」と訳されていいもんだろうか。“ 　　
　Exuberlance”の訳語はさることながら、“ Ex” と“ uber”が麗々しく重なっているのだから、常軌を逸するくらいの量に、驚愕感と無秩序が加わって欲しいと思うのである。つまり夥しく溢れる位では足りないと思うのである。
　
　専門でもないことを云々するのはこの辺にして、劇場とTV、原文と翻訳の関係には似たものを感じる。