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閑長のひとり言

閑長のひとり言

王昭君のこころ

 菱田春草重要文化財王昭君」は、幅3m70㎝の大作である。
 この作品は左右二幕で成り立っている。右幕の女官たちの図は哀切と同情、軽侮に指弾、さらには傍観が入り混じった女の世界である。先頭にはざわつく女官を窘める年嵩の女官が描かれる。
 左幕には王昭君と悲しみに暮れる女官二人が配される。左右二幕の人数には多い少ないがあるが、描かれる感情の量、更にはその質には差がない。むしろ左に描かれる王昭君の、従容と宿命に従おうとする覚悟の表情は、そこだけ光が差し込むようである。左幕の背後と前方に描かれる大きな間が、迷いと邪念のない澄明な境地を表している。断言したいのだが、王昭君は悄然となどしてはいない。だから、王昭君の立ち姿が、この絵の頂点となっているのである。

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