懸腕直筆の語釈
辞書蒐集・研究家の「ながさわ」氏による「比べて愉しい国語辞典 ディープな読み方」は国語辞典を色々な角度と視点から掘り下げ、切り結んでいる。著者架蔵の辞書は1,000冊に及ぶという。
1,000冊という分量は、50種の異なる国語辞典を、版違いと刷違いでそれぞれ20冊づつ手に入れれば、到達可能である。簡単に言うが、とてつもない量だ。蒐集にかけた情熱に敬服する。
さて、本書がほぼベストと推す辞書はやはり三省堂の「新明解国語辞典」である。その他、新語採録では「三省堂国語辞典」、新機軸では大修館の「明鏡国語辞典」を特筆している。
閑長の贔屓する岩波国語辞典、いわゆる「岩国」は、収蔵単語数の少なさを引き合いに咬ませ犬てきに登場するに過ぎない。
この辺、各辞書の特色を画道を例に紹介したい。
新語収録は新画題、新機軸は構図、筆法、画材等の新奇性といえる。
閑長の推す「岩国」は、いわば、懸腕直筆の技を伝えている。結果、描く対象の端正な形と微妙な色彩を再現している。新奇性や奇抜性には乏しくも、基本を押さえた語釈は色褪せない。