快著「近代京都日本画史」
展覧会図録を作成した経験でいうと、情熱を傾けた美術本かどうかは、索引とコラム、引用と注書きの多寡で判断可能である。この要件を高いレベルで充足し、詳細年表まで付いた、嘆息物の書籍「近代京都日本画史」が、昨夏出版された。
画家の主要作品が複数掲載され、技量や得意分野、癖が推察される。
集合写真で、画家の風貌のみならず体格、年齢差まで判る。並び位置から人間関係や序列が推察される。
批難、批評ネタも書き込まれ、綺麗ごとに留まらない画壇の実情が読み取れる。
「アトリエ」「みずゑ」などの美術雑誌を丹念に渉猟し、画家の横顔が紹介されている。
巻末の人物相関図で子弟、友人、グルー響関係が俯瞰できる。一言コメントが秀逸である。
これでもまだ賞賛のネタは尽きない。執筆者である四人の中堅研究者、学芸員さんの労を労うと共に、是非とも次作を期待したい。