巨匠の骨は
東山魁夷の作品は静かである。
少し前、長谷川等伯の「等伯画説」を引いて「しずかな絵」と「いそがわしき絵」について触れたが、東山魁夷の作品などはなど、「しずかな絵」そのものである。代表作「緑響く」など、張り詰めていながら、それでいて静謐な世界がある。
しかしなぜか閑長は東山魁夷の絵が苦手である。食わず嫌いと言えるかもしれない。高校の教科書の口絵で「白馬の森」を観て以来、抱きつづけた印象である。印象だけで物を言って、理由や根拠を挙げなければこの国民作家に失礼であろう。
色彩が淡く、それが魅力なのだろうが、影の薄さに映る。色彩の浮遊感と構図の沈潜感で、作品がポスターのように感じられる。
一言にすると、その作に骨が感じられない。
管見を承知で、不敬な物言いをしてしまった。