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閑長のひとり言

閑長のひとり言

跪き、抱きかかえ

 江戸川乱歩のおどろおどろしい怪奇の世界、近頃テレビでちょくちょく放送され、原作を読み直して、谷崎潤一郎に似ていると思った。描く世界、話の展開、文体、みな似ている。サクッ、すらっといきさつを書き抜ける捌き方など、瓜二つと思う。乱歩の「パノラマ島奇譚」は谷崎の文学世界だし、「人間椅子」の拝跪性も潤一郎のテイストである。反対に谷崎の「黒白」など、乱歩名作集に収まっていても違和感がない。
 年譜をみると、乱歩が八つ年下だが、物故した年月は示し合わせたように同年同月の二日違いである。谷崎の評伝によれば、両者、対談の予定があったが、すれ違いがあり実現しないうちに乱歩が先に亡くなり、二日後、潤一郎も亡くなったようだ。対談は、どちらかというと谷崎が尻込みしたようだ。
 創造のインスプレーションが似通うということは少なくない。閑長は、文学では自然主義文学、絵ではルネッサンス期と印象派の作品の相当数に通底性と共鳴性がみられると思う。当たり前といえば至極当たり前であるが、時代の機運が作家にも作用するのだ。
 乱歩・潤一郎に戻ろう。両巨匠が、意識し、もっと刺激を交わしていれば、さぞ面白かったろうと思う。ハイブリットな文学ジャンル「魔境小説」「幻妙主義文学」を生み出していても不思議はなかったと思われる。

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