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閑長のひとり言

閑長のひとり言

眼の楽しみ、心の愉悦

 血道をあげて手に入れた美術品でも、手に入れてしまうと頻繁に観ることは少ない。同行の士に尋ねても状況は同じようである。昔、三十六歌仙絵巻の一枚を手に入れたコレクターもNHKの取材に同じ回答をしていた。
 では、手に入れなくても良かったかというと、事情は全く異なる。折につけ「在る」「持っている」と思うだけで満足感がこみ上げる。逆に手に入れ損なったらいつもでも悔やむことになる。
 結局蒐集品は、入手の時と胸中の反芻で愛玩することになる。終活を始めてみると、手放す時にもう一度、濃く愛することがわかる。
 閑長の場合、蒐集は出会いと別れの愉悦、胸中の至福といえようか。

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 新津文紀「雨蛙」