miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

翻訳の餓え

 好きな外国の著作は邦訳の全部集めたくなる。そんな本が何冊もある。今、思い出すだけでも、ゲーテファウスト」、カフカ「審判」、メルヴィル「白鯨」、ブロンテ「嵐が丘」、ドストエフスキー罪と罰」、ベルグソン「時間と自由」等々。
 集め易いのはマイナーな言語の長編小説。典型はロシア文学である。有名な「罪と罰」でも邦訳は八例しかない筈である。
これが程よい長さの英米文学で、学生向きの著作となると翻訳数が増える。「嵐が丘」だと十五も邦訳がある。マルケス百年の孤独」のようにノーベル文学賞の著作でも、いまだに翻訳がひとつという例もある。これは独占翻訳権だけの問題ではなかろう。
 翻訳を比較すると、気合の入れ方がよくわかる。国立大学名誉教授を務めた著名な英文学者による「嵐が丘」の翻訳は、読み始めてすぐに先行訳の言い替えだとわかる。意味は通じるが、ツギハギで日本語が流れない。重訳ならぬ替え訳だな、とほくそ笑む所以である。
 翻訳の好みも変わる。流麗な訳より生硬でも手触りのする訳を好むようになる。

 翻訳蒐集が進むと原文でも読みたくなる。

 I ’m animated with hunger, seemingly I musn’t eat.
 どうも喰わん方が良いらしい。空腹だと力が漲る。

 「嵐が丘ヒースクリフの拙訳である。

  f:id:miyukie33ok:20210119143713j:plain