強妻にオーパ
開高健の「オ―パ」「オン・フィッシュ」が滅法面白い。
文が話しかける、というより、が鳴りたてる。ウイスキーをブッくらって、大ナマズを釣り上げてハンマーでドヤし、塩焼きにしてビールで流し込む、とは憧れのアウトドアライフである。世界各地を釣魚行脚するこの紀行は、グルメ小説にもご当地紀行にも、風土考ともなっている。
ボードレールの寸言「ここ以外のどこにでも行きたい」ばかりが開高を釣りに駆り立てたのではなかろう。家庭に居たたまれない事情があったのかもしれない。とまれ作家は、国内外の水辺に獲物と安息を求めたのである。
強妻は哲人と釣り人をつくる。その副産物として豊穣な著作を後世に残した。ウォッカをブッくらって続きを読むことにしよう。