miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

アウトプットのDNA

 大谷崎こと谷崎潤一郎は、自身の分身饒太郎を主人公とする短篇で、思想書でも小説でも最初の数ページを読むだけで中身がわかってしまうと書いている。100%本当ではないとしてももちろん虚構ではなく、事実潤一郎はそういう体験をしたのであろう。
 西田幾多郎は、どんな哲学者のものでも「全集」を所蔵しない理由として、主著さえ読めば思想の隅々までわかってしまうからと述べている。ハイデガーの蔵書も少なかったと書斎を訪れた日本の哲学者が回想している。
 読み手の読解力もさりながら、著作の片言隻語にまで思想が行き渡っている書き手の方も偉大である。

 哲学者という人種は、生まれた時代と国に関係なく、いついかなる所であっても同じ思想を開陳するものだと言い切った哲学者がいた。たしかプラトン学者のブラックだったと記憶する。

 エピソードは違っても、汲み取れる意味は同じかもしれない。著作者も著作にも揺るがない、貫徹した遺伝子があるのだ。

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  「街 灯」