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閑長のひとり言

閑長のひとり言

視界外の視点

 マレーヴィチの「黒の正方形」は、80センチ四方の黒い正方形が中央に描かれているだけの、至ってシンプルな作品である。使われている色は、究極の色とされる黒とカンバスの白のみで、黒色の中には無数のひび割れが入っている。この画題らしい対象のない絵によってマレーヴィチは、至高主義を体現したという。美術的な意味に留まらず、存在論や認識論、神秘思想的な意味も見い出されるという。好きな絵だが、そこまでの理解はできない。
 とまれ、正方形である限り作品は一目で見渡せる。これがもし立方体であったら、一度に視界に入るのは1~3面までで、残る5~3面は視界外となって一度に見渡すことはできない。四面見えるとしたら、立方体の歪みか何かだろうし、鏡で映した裏面は、左右逆になる。こういうリアルで即物的な状況を前にした方が閑長は、存在論や認識論、神秘的な意味がよく胸に落ちる。

 昔、「ビーグル号の三人」というダーウィンの航海を題材とした本があって話題となった。今、気になって調べてみると30年も前の本だが、当時の読後感は今でも鮮明に覚えている。立方体の中央に人間が置かれ、主役の三人、つまりダーウィンに船長、そしてインディオの少年の三人をオカズにしている。三人三様の題材に、人間としての内とそとを含め、六つの方向から間存在を見つめている。

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