miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

見えない実在

 今春、ギャラリー82で予定された第四回メタモルフォーシス展は、コロナの影響で一年延期となった。三年越しに準備しただけに、在任中に開催できないショックは小さくなかった。入場者は一人にするとの条件での開催も、結局容れられなかった。

 メタモルフォーシス展は、脱皮 変身をうたい、若手現代アーチストの作品を展示する催しである。三年前の第三回展の出品作家のひとりに古橋まどかがいる。
 生まれ故郷の白馬の、雪に覆われた情景からインスプレーションをえて、オブジェクトに、パラリと布で覆ったオブジェクトを展示した。雪の下の、眼ではみえない物、雪のない状態の見える事物。それを並べて展示する大胆さ。この作品を見たとき、なぜか吸い込まれるような衝撃を覚えました。見えない実在に心を奪われる思いがした。

 若林奮の作品も似ている。鉄、銅などの金属を用いて自然を表現したこの作家。制作地下3メートルに埋められ、地上には少しだけ作品の断片が覗いている「地下のディジー」という作品に揺さぶられる。
 作品に添えられたキャプションにも魅せられる。

『この鉄の正方形は、地下深くにまで埋められた彫刻作品です。1枚72kg、厚さ2.5センチの鉄板が約120枚も積み重ねられて層になり、約3メートルの深さにまで及んでいます。鉄板の層は多摩・武蔵野地域に暮らした人々の時間と記憶を表現し、地下の関東ローム層の地面や樹木の年輪などの「自然」の時間層と対応するのです。埋められたら彫刻の時間を想像することで、地域の歴史や記憶と自然の姿が浮かび上がってきます。』

みえない実在 見える虚像、この両方をアカラサマにするのが芸術と思う。二方の作品はそれを目の前に顕わしてくれている。
 
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 古橋まどか「オベリスクⅢ」