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閑長のひとり言

閑長のひとり言

曲者同士

 ボードレールの『悪の華』に載っている「時計」という詩は、時計が擬人化して「覚ておけ」と読み手に七回も発破をかける。しかも「覚ておけ」をフランス語、英語、たぶんラテン語、もう一か国語は閑長には国籍不明の言葉を並べる念の入りようである。つまり時計は、毎分毎分の鉱石から、「金」を紡ぎださなければ手遅れになる、と煽っているのである。のみならず最後には皮肉にも「死ね、卑怯者!もう遅すぎる」と言い渡すのである。
 ボードレールならずとも、ゴーチェ、兼好法師、村野四郎など、時を金に譬える文人は多い。身近な格言は「時は金なり」という。
 金はしかし絵画的には、背景となり、空白ともなり、光の当てようでポジにもネガにも転換するという。いわば多重人格色である。
 
 してみると時も金も両方が、捉えがたい曲者と言えまいか。
 
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