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閑長のひとり言

閑長のひとり言

成りてなるところ

 「鹿の角、狼の牙が自ずから形をなすが如く」

 刀工山浦真雄の言であり、刀姿の理想とするところを謳った一文である。真雄が鍛えた刀は、松代藩で行われた刀の荒試しにおいて古今未曾有の成果を上げた。
 四歳違いの二人兄弟で、共に鍛刀した経験もある両刀工は、出来も作風も似るが、話したいのは刀姿のちがいと、刀に込めた願いの差である。人気と刀価において兄を凌駕する清麿作品の刀姿は、自然なカーヴで数学的にも美しい孤を描く。兄真雄は弟に似て、もの打ち際と呼ばれる切っ先の下、一番よく当てる部分が、弟と比べて直線的である。刀で物を切った経験のない閑長の憶断であるが、真雄はあくまでも裁断を狙い、清麿は割り裂きを追求した結果がこの差になったと思う。対象に対する切り込む圧力の差が感じられる。
 
 11月17日とばかり思っていたが、昨日14日が清麿忌、清麿自刃の日だった。
 
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 右、中真雄、左清麿