閑長の秘蔵の段
一昨日のブログで、徒然草を高一で習ったと書いたが、久々取り出した三省堂のテキストが抄録であることに気付いて驚いた。例えば八十八段「小野道風の和漢朗詠集」は未採録なのである。お気に入りのこの段、岩波文庫を基にあらすじを自己流に記してみたい。
ある者が、小野道風の書いた和漢朗詠集として珍重している一書を
「時代が合わず、あやしいのでは」と言うと、
「だからこそ、世にも珍しいのである」と、ますます愛蔵したとさ・・
原文の「さ候へばこそ、世にありがたき物には侍りけれとて、いよいよ秘蔵しけり」に込めた兼好法師の心ばえは如何に。小林秀雄バリに言えば、どれだけ言わず、語らずにいたものか。
邪推、曲解の誹りを承知で閑長は、数多の解説書とは異なる芸道の間道に通じる味な風趣を感じて、ひとり悦に入っている。
辻 潤「如何なる機構も遂に名付け得ず」