主張する登場人物
菊地寛だったと記憶するが、作中の人物が作家の言うことを聞かずに自由勝手に振舞って困った・・とどこかに書いていた。菊地はたしか、作中の男女を結びあわせたかったのだが、どうもうまくいかない。自分のペンひとつでなんとでもなりそうなのに、ゴールインさせられなかった・・・と。面白い。
ドストエフスキーも「悪霊」で同じような経験を語っている。「俺を主役にしろ」と作中のキャラクターが要求してきて、弱った、と。
そういう作品は名作に違いない。
ゲーテは「ファウスト」の冒頭で、
「君が詩人と名乗る以上は、詩に向かって号令を掛け給え!」
と書いている。
“詩に号令をかける” “作品に促される” つまりは作品と内的共感で結ばれている。命の通ったやり取りと思う。