miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

卵料理の性格診断

007のジェームズ・ボンドは炒り卵が好物である。原作を読むと、炒り卵を注文するシーンによく出くわす。映画では一度も炒り卵を食するシーンは無い(自身は無いがほぼ間違いない)。作家開高健は「最後の晩餐」でこんなに炒り卵ばかり食べていると、“ 炒り卵男…

制約ありて

総合格闘技やバァーリトゥード、アルティミットの登場で、ボクシングは最強格闘技の座を降りた。今なお、人気が衰えないのは、制約の効果、美学が働いているからと思う。制約は、忍耐、信念、精神に通じる。パワーとスキルでは表現し切れないものを表現して…

ワカタカカゲの益荒男ぶり

関脇若隆景の初優勝はもう一昨日のことになった。往年の千代の富士を彷彿とされる風貌と取り口で、春場所を盛り上げた功績は、新関脇の初優勝と同じくらい重たい。 さて、いささか気が早いが、閑長は若隆景が今年中に大関に昇進するとみている。その時、四股…

交差点のレーゾーコ

わが家の冷蔵庫は、台所と居間の間に在って、洗面所、廊下に通じる場所に位置している。つまり家の諸機能の中枢部分に陣取っている。だから冷蔵庫の前で、家人との鉢合わせやニアミスが頻繁に起こる。その都度、構成員四人程度のわが家でもこんなに人が行き…

赤と黒、または赤と青

スタンダール「赤と黒」の赤は軍人、黒は神職を象徴している、とされる。それぞれシンボリックな服装の色である。主人公ジュリアン・ソレルは、野心の実現の手段として、聖職者という職種を利用しようと目論む。 ボクシングで“ 赤 ”はチャンピオン、“ 青 ”は…

ポーズと生き様

ボクシングではダウンしたまま10カウントを数えられるとKO負けとなる。10カウント以内に立ち上がるだけでは不十分で、ファイテング・ポーズ、つまりボクシングの構えを取る必要がある。 日本ボクシング往年の名選手ピストン堀口の死因は、轢死である。酔っ…

かそけき世界

“スカラベ”とは「ファーブル昆虫記」に出て来る糞虫である。このスカラベ、糞採集に出かけている間に、肝心のわが家とため込んだ食料の糞を、別のスカラベに乗っ取られてしまう。けれども挫けず、メゲズに又、糞採集に出かけるスカラベにファーブルは、厚意…

白と黒

谷崎潤一郎の中篇小説「黒白」は、谷崎の作らしからぬ処がある。筋がキッチリ通っている上、犯罪小説張りのストーリー展開をみせる。差乍ら江戸川乱歩の探偵小説である。 「黒白」のあらすじを記す。 水野なる作家が、自分と実在の人物をモデルに、完全犯罪…

ティッツアーノとレンブラント

画家は没年に関係なく、描くべき作品を描き尽くた、というのが持論である。早逝と長命に関わらず、である。 べつの物差しで、傍から見て、恵まれていたか、山谷があったか、というと対照的なのが、タイトルの二人の画家である。 片や名声と長寿に恵まれ(ペス…

るす模様としての道

少し前に、キリストの後ろ姿を描いた絵を観てみたいが、そんな絵を観たことがないと投稿した。今も変わりがないのだが、最近、美術書を眺めていて、「こんにちは、クールベさん」がそれに近いように感じた。ギュスターヴ・クールベの代表作にして意欲作であ…

“ あっ ” で終わる「マー姉ちゃん」

朝ドラの「マー姉ちゃん」は、長谷川町子の「サザエさんうちあけ話」をドラマに仕立てたもので、今、再放送されている。多分、年度末の今週でお終いになる。初回放送は1979(昭和54)年というから、40年以上前の事である。当時、東京の下宿で寝転がって漠然と…

新刊として産まれ、古書、古典籍として育つ

蔵書が増えてボックス倉庫を借りている。 「そんなに買って読むのか・・」という質問に、 「切手コレクターにそんなに手紙を出すのか」と聞くようなものだ・・ と往なしてきた結果である。 還暦を過ぎると処分に頭を悩ますことになる。 読み切れないことは分…

派手さ、渋さが決する雌雄

来国行は刀匠集団来派の始祖で、直刃調の渋い作りをもって知られる。 長船光忠は、こちらも一大刀工グループ長船派の祖で、華麗な刃紋が多い。 どちらも代表作は国宝に指定され、尊ばれているが、総じて世評は光忠が高い。 それは国宝重文指定数の差でも判る…

蛮行、犯罪、固有名詞

ニュースでプーチン大統領のウクライナ侵攻を「蛮行」と呼ぶコメンテイターがいたかと思うと、近頃ではアメリカのバイデン大統領が同氏を「戦争犯罪人」と明言し、悪業、悪名の度合いがエスカレートしていく感がある。 以前閑長は、ナチスドイツのヒトラーに…

二院制は何のため

わが家の娘二人が、衆議院と参議院の二院がある理由を話題にしていた。二人と立派な成人なのだが、出した理由は曖昧模糊としたものだった。 日本国政府が運営する参議院の「よくある質問」には、“二院制の利点”として次の三点が挙げられている。 (1)国民の様…

展覧会と即売会

お付き合いのある美術商さんが春の即売会の企画し、その展示場作りをお手伝いした。主に絵画作品を吊る作業である。全45点、我ながら良く吊ったと思う。 展覧会では「一視界一作品」などというけれど、それができている美術館がどれだけあるのだろう。ルーブ…

主客の立ち位置

「聞こえるメロディは美しい けれども聞こえないメロディはもっと甘美である」 ジョン・キーツ「小さな真実は明晰な言葉をもつが、 大きな真実は大きな沈黙を持っている」 ラビンドラナート・タゴール こころを打つ知恵の言葉である。 けれども閑に任せて付…

自選による「サラ川」拾遺 そのⅣ

「サラリーマン川柳」。そのボツ作の寄せ集めである。今回はその昼食版。 黙食で ランチ説教 小休止 コロナに黙礼 この川柳は以前も紹介した。 サァ行こか デブは道連れ 外ランチ 皿メシ大盛り この川柳がぼつぼつ現実になってもらいたい。

ボクサーのお郷

閑長がオールドボクシングのファンであることは以前にも投稿した。その折、ウェルター級タイトルマッチの、シュガーレイ・レナードVS ロベルト・デュランの一戦を、黒豹とジャガーの闘いに譬えた。両獣とも、出身大陸の肉食野生動物の雄だからである。 今は…

記憶の人となり

いまは今朝の事すら忘れてしまうが、学生時代は記憶力に自信があった。世界史用語集の年号を全て暗記して悦に入っていた。それとて所詮は井の中の蛙で、記憶力がいい・・というのは、中学生ならば教科書に載った芥川龍之介の「杜子春」を自然に覚えてしまう…

選りすぐりの美術品

美術品では指折りの販売実績を誇るある美術商さん。その話の続きである。 絵画の即売会で、美術品の市場動向がわかる。 ・売れない画家さんの品は展示されない。 (これは、見事なまでに徹底されている) ・高過ぎず、安過ぎず、売れる価格が付いている。 ・地…

買主の顔が目に浮かぶ

地元で指折りの販売実績を誇る美術商さんが時折、「いい○○が入ったから見においで」と呼んでくれる。 お陰で岸田劉生の珍品や小山敬三の名品、熊谷守一のタブローなどを実見でき、眼福にあずかっている。 その品々、昨日仕入れた品物でも、もう買い手がつい…

まくりとのがれ

画家さん同士が描いた絵をどう保存しているか相談している場面になんどか出くわした。描けば右から左に売れていった、という横山操は別として、描けば描くほど作品が貯まっていくのが画家さんの宿命である。 アトリエ→押し入れ→物置→倉庫のルートが、絵の保…

「いいね」から「買った」まで - 距離と時間

美術界のプレイヤーに、美術館、学芸員、画家、美術商、コレクターらが存在すると昨日の投稿に書いたけれど、コレクター(買主)が作品を買うまでのプロセスには、「いいね」から「欲しい」「買いたい」「買います」「買った」までのプロセスがある、と思う。…

愛しくも厭わしい世界

昔、貸ギャラリーを運営していたことがあって、今、閑長と名乗っているのはそのためである。今思えば貸ギャラリー当時の経験は実に浅く、しかも一面的だった。 一口に美術界と言っても、貸しギャラリーの他にも、美術館、学芸員、学芸員ソサイァテイ、プロ画…

北国の暴君、その胸の内

「北国の帝王」というアメリカ大恐慌時代を描いたハリウッド映画があって、大陸鉄道を無銭乗車する労働者と機関士との対立と抗争をテーマにしていた。リー・マービンとアーネスト・ボーグナインの競演が光っていた。登場する男たちは皆、命がけなのだが、現…

最小・最弱の存在

TVで「戦国最弱の武将 小田氏治」という歴史番組を観て、氏治の生き方がウィルスの戦術に似ていると思った。 いくさ下手の氏治がこだわる点は、領地維持と領地回復の一点で、取られたら取り返す、また取られたら取り返す、を何度も繰り返す。単細胞的であ…

アースとアートの相互関係

ついさっきのこと、背中で聞いていたテレビで、自閉症の子らを対象とした遊園地を紹介したNHKニュースが「自閉症の子はアースカラーを好むため、遊具に茶色や緑を多用している・・」とアナウンスしてい、振り返ってしかと観た。朝八時ころのことである。背中…

中と英の各国史 

受験の世界史で、仕上げとしたのが各国史だった。当時、各国史専門の学参は三省堂が出している一冊しかなく、200ページ余りのその本を、二、三日で頭に叩き込んだ。もう半世紀近く前のことである。 受験当時は特段の所感を持たなかったが、三十代以降、数多…

大観力

閑長が横山大観の画に求めるのは、ち密さでも繊細さではなく、描写力でもない。では品格か、画境かと聞かれれば、そればかりでもない。 「老子」の顔貌や「風蕭々兮易水寒」の犬の四肢にみえる、大観にしかものせぬ表現の世界である。この世界は、俗に良い大…