miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

往と環と

映画「追憶」は往還の映画と思う。過去と現在を行き来して、ストーリーを織りなしている。ラストは往還のクライマックスである。大通りを行き来するハーブラ・ストライサンドとロバート・レッとフォードは、時間とお互いの立場を行き来する。 行き来だから、…

魂の往く道

岸田劉生はクリスチャンとして知られる。劉生日記には、“神よ助け給え”、“神よ感謝いたします”などの言葉が並ぶ。最近、劉生が読んでいた聖書の版本を繙いて、ヨハネの福音書の冒頭、「ことば」に「道」という字が当てられているのを見つけた。劉生が目に停…

オタマジャクシの効用

カントの音楽嫌いとニーチェの音楽好きは結構よく知られたエピソードと思う。イマニュエル・カントは隣家のピアノが煩くて引っ越しした。ニーチェは自ら作曲するほどだった。 今、音楽の色眼鏡で二人の哲学著作を眺めると、「純粋理性批判」はくどくどしい念…

新世紀味に令和風味・・

「笑点」の司会者で落語芸術協会会長を務める春風亭昇太、「あわて」を表とするその芸風は、落語界には珍しい新味に思う。「とぼけ」「ぼけ」「つっこみ」「あかし」「おとし」「間」は、この世界の常道として、江戸前にはキレ、上方には流れと調べがある。…

掌に残るもの

「何事も自分で直接経験してみよという」という謂の「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」という俚諺があるが、茶碗の場合は「持ってみよ」となるのかも知れない。茶道具展であまた並ぶ茶碗からたった一つを選びあぐね、茶を喫するしぐさをしてみて覚った。 …

たんほぽの産毛

川端文学のエロティシズムの極致は「眠れる美女」でも「千羽鶴」でもなく、絶筆の「たんぽぽ」と思っている。「踊り子」といえば度肝モノかもしれぬが、閑長は「たんぽぽ」のこころ根のエロスに、並ぶ作はないと感じている。 「たんぽぽ」の後段に、代名詞的…

この君愛おし

大田垣蓮月は知ってはい、画集か何かで書跡も見たが、実物の繊細さと品格に驚いた。蓮月尼の手になる「茶杓」と「添え書き」に出会った所感である。「くれ〇」は何と読むのだろうか、店主に聞くのを失念した。手にすると、こな雪のような軽さだった。「末の…

智の弁え

水滸伝の英雄、武松の他にもう一人挙げよ、となったら花和尚魯智深だろう。 その錫杖の重さが、百斤だったり、八十二斤だったり、六十二斤だったり、記載がまちまちで、それも魅力である。最終節、今際に臨んで「円寂」の意味を解さず、坊主に教わって従容と…

隻手のかしわ手

やはり水滸伝英雄ランキングの筆頭は、登場順ではなく、異様性と仕舞際だった。閑長は行者武松を推したい。素手で猛虎を撲殺したからではなく、方臘討伐でその腕を片方失い、戦友林冲を片腕で介護しつつ、寺男として長寿を全うした生き様に、水滸伝には稀な…

伝わる情趣、背負った定め

力士の四股名はどこかコメの香りがする、といった人がいた。一文字や難読の四股名がこんなに増える前の、昭和の話である。土の匂い、地酒の香りと言い換えてもいいと思う。 ジェームズ・ボンド007の映画は、どれも異国情緒が感じられた。旅情があった。主役…

三者燦燦・・

ルソーという画家は複数いても高々お二人で、時代も画風も大きく異なって混同することは少ないが、ラ・トゥールとなると、三人いて、覚えてしばらくすると忘れてしまい、その度に蠟燭とポンパドール夫人とランボーに再会することになる。 夜のラ・トゥール、…

壮大な兼務を・・

驚異の二刀流で、それぞれリーグトップを走り、敵軍からも愛される大谷選手は、まさに「野球の申し子」・・というのは、かなり以前に記事にした。 ずっと先の引退後については、国連事務総長とアメリカ大統領の兼任でも目指してほしい。

壮大な兼務を・・

驚異の二刀流で、それぞれリーグトップを走り、敵軍からも愛される大谷選手は、まさに「野球の申し子」・・というのは、かなり以前に記事にした。ずっと先の引退後については、国連大使か事務総長、アメリカ大統領でも目指してほしい。

虚と実と虚々実々と

車谷長吉が小説には「虚点」が必要と書いていて、それが書けていない小説の例を挙げて賞がとれない理由としている。虚点の量は作家によるのだろうが、私小説家車谷の小説は、虚点ばかりらしい。 写実画でも、写実一辺倒では真をとらえ得ず、現実を跨いだ超現…

お次が次々と・・

先日幕を閉じた先進国脳会議は、さながらコロナ対世界各国であり、中国対世界各国だった。世界史上、最大の工場と市場を併せ持った国があったろうか。加えて非民主主義国家のメリットを遺憾なく発揮して、意思決定の速さと犠牲さえ厭わぬ非情の大局観が無双…

未だ・・

小学生の低学年の頃、原っぱでミツカドこおろぎを採ったことがあった。その面相をみて、驚いてすぐに逃がしてしまった。一瞬、目があった瞬間の映像を今に記憶する。 数年して、小川でヤツメウナギを網ですくった。この姿かたちに胆をつぶして、これもすぐに…

まとめて、わけて・・

iPS細胞の山中教授と新型コロナのワクチンを開発したカリコ教授がTV対談して信念や苦労譚を語り合っていた。ワクチンの構造と有効期間などが判って楽しめた。最後に山中教授が、パンデミック・リスクがしばらく軽視されてきたことを採り上げ、食糧問題…

湿潤と乾燥

数日前にテレビで「たそがれ清兵衛」を流してい、途中から最後まで観た。面白かった。藤沢周平独特の湿度が、随所にみられはしたが。 正直、閑長は藤沢周平作品の高湿度、高粘度が苦手である。時代物ならカラッとした文体の五味康祐、柴田錬三郎、南條範夫を…

一斑全豹

アントニオ猪木が二度目の入院をし、ネットに「元気ですか!」と雄叫ぶ姿が配信されている。顔も体も痩せて、往年の面影はない。 猪木で思い出すのは異種格闘技で対戦相手の蹴りをビデオで見て、「キックが甘いね」と述懐するシーンである。甘いキックとは、…

自由であること、作り出すこと

抽象化だけでは、既存の分野を極めることはできても、新分野や新境地を創り出せないのではないか・・。昨日の記事で言えなかったのはこの一言に近い。「新」の開拓・育成に最も必要なのは “ 自由 さ” と思う。自由には息抜き、夾雑物、わき道、凸凹、ザラザ…

高度化と抽象化 

物理学者の橋本幸士博士は科学誌「ニュートン」の常連執筆者である。ついこの間まで大阪大学の教授と思っていたら、先ほど、母校の京都大学の理学研究科の教授に就任した。専門は超ひも理論と素粒子論。胸躍る分野である。 博士はいう「もともと数学がやりた…

明滅する存在

昨日、 “神” にまつわるツァラトゥストラの言辞を投稿したあと、ああ・・!というのを一つ思いついた。「死と再生を繰り返す、それが神だ」 してみると点滅する電荷的存在という概念もきわめて神に近い。 「変化し続ける」、「あらゆるものと関係を結ぶ」、「永遠…

如是 恁麼 異没

毎朝、健康維持のためウォーキングをしている。負荷のため坂道ダッシュを三本組み込んでいるが、坂を上り終わった丘の上の教会に、マタイ11章28節が掲示されている。「凡て勞する者 重荷を負ふ者、われに來れ。われ汝らを休ません」という一文である。 今朝…

糞でも喰らうか・・

ガルシア・マルケスの中篇「大佐に手紙は来ない」をフト思い出して読み返して、面白かった。 「確実にくるのは死だけ」という一文を、わが身と引き比べて味わった。 最後、老大佐のこころが全く揺るがないところが、気に入った。 自分も、頑迷に揺るがぬまま…

ふたり静か

色に魅せられる、という絵は少なくないが、魅せられた色が絵の中の一色という珍しい例が、映像の上村松園の掛け軸である。美術品バラエティ番組で紹介され、録画を漏らしたので、再放送を約一か月に亘って「張って」ようやく再び巡り合えた。左側の母親と思…

プリミティブだと届く

突然だが“ こども語 ”が話せると思っている。こども語の定義も辞書もないが、幼児語である喃語と異なり、年少さんから小二までの子の話し方である。娘二人の話し方で習い、覚えた。 「子ネコいるよ」「ジャムぬった方が美味しいよ」などと話す。言い切り型で…

道の思い出、記憶の途

古い写真や映像を見ていると、写っている道で、その場所や時代の記憶が蘇ることが多い。歩きながら、あるいは自転車や車を運転しながら、見るともなくみていたことが理由と思う。思い出を心に折りたたむには、時間と身体が必要なのかもしれない。 ]

コロナ対策分科会の尾身会長の「パンデミックの所でやるのは普通ではない」と発言したのは、ごく普通の発言と思うし、そう思うのも、国民の普通の感情と思う。与野党に波紋が起きているとしたら、検討と説明を尽くしていない証拠だろう。普通を普通でなくし…

わけずに愛して‥

高校時代の日本史の授業で、担当のK教諭が突如、「平安時代を四つに分けるとしたらどう分けるか」とクラス全員に質問したことがあった。閑長はじめ面食らった学生たちは、ただアワワワ言っていたと記憶する。K教諭の答えが振るっていて、平安時代は400年な…

達意の減筆

セザンヌの「塗り残し」は本のタイトルにもなる位、有名なエピソードだが、いわゆる未完の魅力は近代以降の事と思っていた。最近、「Non finito」、“ 未完成 ”なる技法がルネサンス時代にもあったと知って、啓発された。 “ Non finite ”の好例、「ピエトロ・…