miyukie33ok’s blog

閑長のひとり言

閑長のひとり言

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

かなたの表現

「耳に聞こえるメロディは甘く美しい 聞こえないメロディはしかし、もっと美しい」 ジョン・キーツ「小さな真実は明晰な言葉をもつが、 大きな真実は大きな沈黙を持っている」 ラビンドラナート・タゴール こころを打つ知恵の言葉である。だが閑に任せて付け…

本人たちは知っている

チャレンジャーは強いだけでは王者になれない。チャレンジャーらしい勝負で王者を下さなければならない。 1985年の山下・斎藤の講道館杯柔道は、49対51で斎藤の勝ちだった。試合後の両者のしぐさでわかる。斎藤に足りなかったものをあげるならば、挑戦者とし…

一瞬の実態 一見の中身

テーブルクロスを、コップや食器を倒さないで一瞬で引くという芸がある。やってみたことはないのだが、クロスを引きつつ、三、四センチの空気の層を反対側に押すと、成功すると思う。みんな知っているのかもしれないが、引くように見えるが、押すのがコツと…

ドラマだった

BSで朝ドラ「澪つくし」が再放送されていて、昨日が最終回だった。エンディングのドラマツゥルギーに感動、敬服してしまった。大きな筋の構えが麗しい。小味と伏線が効いている。細かなストーリーの披露は略させて頂くが、宗吉の三度目の求婚を断りつつ、未…

人知れぬ美しさ

最近入手した画集に画家の署名と識語があった。署名は承知していたが、識語には驚きかつ喜んだ。「美しさとは目立たぬことである」とある。画家は本荘赳、小学校の先生を長く務めた平塚の画家さんで、あえて盛名は求めなかった。識語のとおりの境涯と画業だ…

小味のワンカット

「エクスペンダブルズⅡ」で新たにメーバーに加わったビリー・"ザ・キッド"・ティモンズが、軍隊を辞めた理由を 「上官の命令で、面倒を見ていた野良犬が殺されたから・・」と語るシーンがあって、チームメイトのヘイル・シーザーの表情が写された。シーザー…

背負ったもの

古賀の背負投げは本物だった。本当の背負いだった。近頃は大腰ならぬ大背、背中巻き込みとでも呼びたい背負いばかりだ。古賀は相手と自分の運命を背負って、一本を決めた。

瞑目する色

白は光を発散するのに対し、黒は光を吸収する色という。ベルギーの作家 フレデリク・デ・ヴィルデは究極の黒で今までにないレベルの吸収率をもつ黒の制作に挑んでいる。目指すのは「究極的な色の不在」という。 以前にも書いたマレーヴィチは「シュプレマテ…

数学者は予想し、証明する

数学の証明は一度であるが、「予想」という形で準・証明が提議される。数学には、仮説の提唱とその証明とがあって、仮説を提唱する人とそれを解く人とは、しばしば異なるらしい。 証明には又、「レンマ」という問題の書き換え、言い替え、があって、数学は懐…

物理学者は二度、証明する

先日、BS番組で「最後の講義 村上斉」が再放送されていた。これまで何度も観たのだが、もう一度聞きたいエピソードがあって録画して観た。 村上先生は、小学の低学年で高校の数Ⅲまでマスターしてしまったらしい。高校時代、数Ⅰに四苦八苦した自分と引き比べ…

消耗しない輝き

消耗しない輝き 映画「エクスペンダブルズ」(消耗品ども)のラストシーンが、男の友情を描いていてお気に入りである。 謙抑と虚勢、張り合いと譲り合い、自負と自嘲、こもごも相俟って、一篇の短編映画のよう。出演俳優の表情がまたいい。ラストシーンだけ見…

未知のみづうみ

川端康成「みづうみ」は、教え子との不倫で退職になった元教員銀平の話である。銀平は美しい女の後を追跡する癖がある。みずうみのような少女の瞳の目のなかで泳ぎたい、という銀平の歪んだ願望がタイトルになっている。 瞳と言えば、映画「カサブランカ」の…

中国数千年の多様性

荊関、薫巨に李成・范寛・郭煕など、巨人犇めく中国絵画の流れの中で、呉昌碩に斉白石、張大千ら、近現代画家の作をみるにつけ、能品、妙品、神品、逸品に、"商品”カテゴリーを新設すべきとの思いに駆られる。 ある美術史家は中国の宋元画はイタリアルネサン…

色つきの手紙、香り付きの音信

普段はラインかメールでやり取りする先が、ときに書簡を送ってくることがある。展覧会の招待券が同封されていることもある。春三月、先だっては上野の森美術館のVOCA展と三越の春の院展が届いて、嬉しかった。電子文字で伝えられることでも、手書きの文字は…

みちが見せるもの

右か左か、前進か後退か、止まるか往くか。 道を描いた絵には、選択という要素が籠っている。 一本道でもそうだが、四つ角、三叉路などはなお更である。 中折れ路は、分岐点のようである。 途の周りの景観、オブジェクトは行路の人、出来事、事物にみえてく…

迷言集 改定追補新版

改定追補新版「理屈とほこり何処にでも着く」 「生きるに生き過ぎなし」 「花、咲くに任せよ 人、生きるに任せよ」 「錆が出るのは鋼(ハガネ)の証拠」 「平均は群れる」 「打たれるとも出る杭となれ」 「見どころのある角、それが圭角」 「バカとウィルスは…

寸劇の走馬灯

大相撲の場所中に新聞休刊日になると、休刊明けに二日分の取組結果が掲載されて、時間が圧縮された気分になる。 大仰だけれども、走馬灯のように蘇る・・といわれる今際の刻を、小さく味見する気分である。 明日がその日にあたる。

虫の文字

「類人猿ターザン」で著者のバローズは、チンパンジーに育てられて文明を知らないターザンは、文字の独習法として、一冊の本に記された文字を “ 虫 ” として扱い、同じ虫を集めて 文字 = 意味 として認識していった、と書いている。 その可否は置いて、無視…

牡丹が一輪咲いて、庭に灯がともった。 雨上がりの澄明な空気が、牡丹の紅を鮮やかに見せてくれた。 花落とし散りし牡丹の男振り 著名な女流俳人の句 閑長の駄句は 今は咲く いずれは散るも 紅牡丹

筆の先、カンバスの裏

ある画家さんに、パターン化しない工夫を尋ねたことがある。愚問は承知だった。花や花弁、植物を大画面に描く画家さんだった。実物の花や植物を見ながら描く、が答えだったが、これでは疑問は解消しない。導管や篩管をイメージし、根っこを掻きまわし、秋と…

内的共感の相手

昨秋、我が家の庭で、かまきりの卵が産み付けられた場所はどこも地面に近い、低い場所だった。それを見たカミさんが、〝カマキリ占いが正しければ、今年の雪は少ない”、と言った。か まきりは、豪雪ならば高所に卵を産み、低所に産むときは雪の少ない年・・…

往く人は、

長谷川利行は明治24年に生まれて、昭和15年に49歳で死んだ。大正の15年間は通して生きたわけだが、「廃道」はその末年に描かれた。利行35歳の作である。 この絵は、第回帝国美術院展に出品された記録があるが、その後失われた。今は「夜の道」と題する歌仙紙…

快著の快刀乱麻

院展画家の特徴であり、落し穴でもある傾向が、ずっと謎だった。謎をかけたのは針生一郎「愛憎の画家たち」である。答えまで書いてくれればよいのに、謎だけかけて放って置かれた。 小林秀雄の玉堂評が気になっていた。曰く「画技に豊かなものがないから、含…

ダルのテンション

サンディエゴ・パドレスに移籍したダルビッシュ有か、2回4奪三振無失点で新天地デビューを果たした。試合後のコメントで「好きなユニホームで気分がよかった」とコメントしている。 この気持ちよくわかる。ピッチャーは投球フォーム時の肩とか、投げ終わった…

老狼の美

ヘッセの「荒野のおおかみ」には、小説と詩があるが、詩の方の話である。 この24行の詩は、 「おれは荒野のおおかみ、走りに走る」と始まり、 「生活を朗らかにしてくれるものは、おれから遠ざかってしまったのか」と続き 「おれの尾はもう白くなりかけた。 …

旋回と締めくくり

「良い絵には中心があって、右回りまたは左回りに画面が構成され、最後に締めくくりがある」 渡邉包夫『「古書画」目利きの極意 - 鑑定の鉄人part4』に書かれている、“ 優れた絵の特徴 ”である。日本画について語ったものだが、西洋画にも中国画にも当てはま…

無限をみつめて

アルキメデスと亀の寓話は、無限拡大と無限分割の混同の産物という。無限には二種類ある。 子どもの頃、子供と言っても小学生の低学年の頃、テレビにまつわるこんな夢想をした。観ているテレビの中で、テレビを観ている自分がいる。そのテレビでまた、テレビ…

少額積立

就職して直ぐに天引きの積み立てをはじめた。自発的というより、職場の暗黙のルールだった。月々の額は少額だったが、天引きだから知らぬ間に貯まり、30代で車になり、40代で家の頭金になった。その後も積立ては続け、今や老後の貯えとなっている。 今あらた…

特殊部隊と芸術承継

ゴーン被告の国外逃亡を幇助した元グリーンべレー隊員父子の身柄が拘束され、「グリーンベレー」や「特殊部隊」が取り沙汰されている。 戦争が国家目的の遂行を目的としているとすれば、特殊部隊は作戦目的の遂行に特化した部隊なのだろう。 仄聞するところ…

南海の怪獣

上田閑照が西田幾多郎の著作の難解さを「何ページにもわたって一行も理解できないことがある」と書いている。上田自身、岩波で全11巻の著作集を刊行している哲学者である。 西田の弟子が難解で解らないので解説書を書いてほしいと頼んだが、出来てきた本は、…